November Letter

レビュー
　幼蚕文庫は浮森かや子が主催を
務めるサークルで、ノスタルジー
と独特の儚さに満ちたメルヘン調
の歌謡曲が人気を集める。特に、

その唄声は甘く包むような声色と
圧倒的な演技力・表現力で、一度
聴いたら決して忘れられない魅力
を秘めている。
　本作は全４曲、収録時間は全体
で１０分に満たない。
　基本は打ち込みであるが、一部
生楽器による演奏も含まれている。
ピアノを主体に刻まれるしっかり
とした音色を中心に、バラエティ
豊かな楽曲が収められる。
　導入のピアノも鮮やかなＭ１は、
同サークルらしい懐かしさ溢れる
歌謡曲。少女的な赤く濁った心象
を綴る歌詞も特徴的と言える。
　Ｍ２は旧作の「ひとり芝居」に
収められた楽曲の復刻版。旧譜は
既に廃盤だが、現在ミニアルバム
「ちいさな蓄音劇場」に再録され、
入手しやすくなっている。楽曲の
疾走感と、ふわふわとした唄声が
孤高の世界を描き出す。
　最も印象的な曲は終曲のＭ４。
縦笛や手風琴など、生楽器の個性
豊かな音色が紡ぐフォルクローレ
風味の楽曲になっており、サビの
勇壮な旋律と、慟哭を抑えるかの
ように力強く歌い紡がれる歌唱に、
ひたすら圧倒されてしまう。