November Letter

レビュー
　あくたむしは、主催及び作曲の
いわまひろゆき、女性ボーカルの
ぬのによるユニットで、一般的に
カオティックコアとでもいうべき
音楽性で注目を集めている。兇悪
に暴れ狂う鉄壁のギターとドラム、
咆哮に酔い痴れるデスボイスなど、
前述した個人的なメタル苦手要素
全部載せ状態であるが、昏く蠢く
鍵盤の音色や、ドラマティックな
曲展開には大仰を通り越して光る
要素がある。
　その音色の迫力は冒頭Ｍ１から
全開で、鼓膜を劈くようなギター
とドラムの連打は、ノーブレーキ
で大型車が突入してくるレベルの
戦慄であり、数瞬の間を置き怒涛
に加速していく展開も衝撃必至。
デスボイスを交えた歌唱も圧巻で、
決して上手くはないが、聴く者に
異形への強い警戒感を与えてくる。
無限に暴走する勢いで雪崩れ込む
Ｍ２も強烈で、歪むギターの呻き
と場違いに流麗なピアノの響きの
対比が鮮烈に響く。しっとりした
間奏の余韻も束の間、冴える絶唱
とサビへの絶叫が耳から離れない。
　Ｍ３は植木屋のプログレコンピ
「UNASEA」に収録された楽曲。
同コンピ盤でも圧倒的な存在感を
放つ楽曲だったが、本作に向けて
重厚に編曲された内容は驚異的で、
プログレ的に無視できない一曲。
複雑な曲構成や疾走感、個性的な
歌唱はそのままに、メロディアス
で荘厳な泣きのサビに突き抜ける
カタルシスが展開される。